
「まちに新しい施設ができるって、地方では一大事なんですよ。だからこそ応援してもらえるように、丁寧に時間をかけて地域の人たちと関係を築きながらつくっていく。そうすることで本当に愛される施設になるし、私にとってもそのまちが第二の故郷のようになるんです」
そう話すのは、アカデミック・リソース・ガイド株式会社(ARG)の代表・岡本さん。
ARGは図書館などの公共施設づくりのプロデュースや、研究機関と企業の協働をサポートする産学連携事業など、アカデミックな分野でのビジネスを展開している会社です。

李さんが5年以上かけて取り組み、今年の1月に開館したのが、福島県須賀川市の市民交流センター“tette(テッテ)”。
図書館や公民館、子育て支援センター、ミュージアムなどの機能が融合した5階建ての施設は、震災復興の文化的シンボルとして整備された。
施設全体に本棚を設置して学びのきっかけを広げたり、広場のようなホールやカフェ、ショップ、怪獣のモニュメントなどが並ぶ通りをつくったりと、新しい試みも多い。
自分の住むまちにこんな施設があったらきっと楽しいだろうな。

最初は設計事務所から図書館のコンサルタントとして依頼を受けました。でもプロジェクトに関わるなかで、ミュージアム設置の起案を行いそのキュレーションをやることになったり、カフェ導入のプロセスデザインをしたり」
ほかにも、市民によるパートナーズクラブの立ち上げを支援するなど、いろんなコンテンツやサービスに関わっている。
「単なる施設の復旧はなく、より良いまちづくりにつなげる『創造的復興』を目指したいという市長の強い願いが込められたプロジェクトでした」

「たくさんの市民が思い思いに過ごしているのを見たり、『こんな施設ができてよかった!』っていう声を聞けたりすると、すごくうれしいんです」
施設が完成してからも関わりは続いている。李さんは、施設のコンテンツとしてイベントの企画運営やドキュメンタリー映像の制作のために、1月にオープンしてからも何十回と通っているそう。
大きなプロジェクトだからこそ、長い時間もかかるし、覚悟と熱意が必要になる。
まちの誰もが関わる公共施設は、地域にとって大きな意味を持つ存在です。0からつくりあげた施設が地域に良い変化をもたらしたとき、この仕事にしかないやりがいを感じられるように思いました。
(2019/5/13取材 増田早紀)
tette テッテ 須賀川市民交流センター
https://s-tette.jp/